2024年04月18日更新
1.はじめに
令和6年第1回宇城市議会定例会の開会にあたり、施政方針を申し上げます。
現在、我が国の経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え、改善しつつあります。30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲など、経済の先行きは前向きな動きが見られており、デフレから脱却できる千載一遇のチャンスを迎えています。
他方で、賃金上昇は物価上昇に追いついておらず、個人消費は依然として力強さを欠いています。
県内では、世界最大手の半導体企業TSMCの進出により、県北を中心に地価や賃金の上昇をはじめとした経済への波及が目に見えて現れております。その効果は100年に一度の規模と言われ、まさに半導体バブルの様相を呈しております。
しかしながら、農業との共存や追いつかないインフラ整備などの課題も多く、また、その効果は局所的なものであり、本市への波及もこれからといった状況です。さらに、世界的にモノの国際的相場が大きく上昇するなか、円安の影響も加わり、物価高騰は深刻さを増しております。
そのような中、令和6年度は市政施行20周年という記念すべき年であり、私の3期目の任期の最後の年でもあります。市民の皆様、市議会議員の皆様これまでのご協力に感謝申し上げますとともに、いままで積み上げてきた好循環のための布石をさらに積み増し、人口減少社会の中で生き残りを賭けて、全力で市政運営に取り組んで参ります。
2.日本経済と国政の動向
内閣府による令和6年1月の月例経済報告によれば、「景気は、このところ一部に足踏みもみられるが、緩やかに回復している」とされており、雇用・所得環境の改善のもとでの各種政策の効果もあり、緩やかな回復が期待されていますしかし、世界的な金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクを抱えており、物価上昇、中東地域の情勢、金融資本市場の変動等の影響に加え、令和6年能登半島地震が経済に与える影響に十分注意する必要があります。
同様に、九州経済産業局による九州経済の基調判断によると、九州の景気も緩やかに持ち直しているとされており、生産は持ち直しの動きがみられ、輸出は25か月連続の増加、個人消費は回復傾向にあり、雇用も改善している状況にあります。
このような情勢の中、国の令和6年度予算は、「経済財政運営と改革の基本方針2023及び2022」に基づき、経済・財政一体改革の着実な推進を行う一方、重要な政策の選択肢を狭めず、歳出全般にわたって施策の優先順位を洗い直し、かつ無駄を徹底して排除し、予算の中身を大胆に重点化するとされています。
詳しくは、気候変動や紛争などの世界的な課題に加え、国内における長期的なデフレ経済からの脱却、急速に進行する少子化、持続可能な経済社会の構築など「新時代の転換点」とも言える内外の構造的課題の克服に向け、人や科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、GX・DX、半導体、AI等への投資といった新しい資本主義を通じて、社会課題の解決に向けた取り組み自体を成長のエンジンに転換し、裾野の広い成長と適切な分配が相互に好循環をもたらす「成長と分配の好循環」を成し遂げるため、「重要政策推進枠」が措置されております。
本市を含む地方財政への対策の主なものとしては、地方団体が、住民のニーズに的確に応えつつ、こども・子育て政策の強化など様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税や地方交付税等の一般財源総額について、令和5年度を上回る額が確保されており、中でも地方交付税の総額は令和5年度を1.7%上回る18.7兆円が確保されております。
また、こども・子育て政策の強化のための新たな起債が創設されるとともに、普通交付税の費目に新たに「子ども子育て費」が創設されます。
3.令和6年度市政運営の基本方針
本市の財政状況は、義務的経費が全体の半分程度を占め、経常収支比率は依然として高い水準にあり、財政の硬直化が懸念されるものの、人件費抑制や施設の統廃合、滞納整理強化などの行財政改革の取り組みの成果が出ています。この取り組みにより財政調整基金等を徐々に増資でき、財政健全化判断比率の指標は健全段階に位置しており、他の類似団体と比較しても遜色ない良好な状況です。
令和6年度一般会計の収支見通しは、自主財源に乏しく地方交付税など国の動向に左右される財政構造のため、歳入面では財政調整基金を一定程度取り崩し予算編成する状況です。
歳出面では、老朽化した施設の改築・改修に伴う建設投資の市債が増加傾向にあり、交付税措置が有利な合併特例事業債も上限額に到達したため、これまで以上に必要な投資を適切な時期に集中的に行うことが求められます。
また、少子・高齢化、保育・子育て環境向上などに伴う社会保障関係費の増大や、デジタル関係経費及び公債費の増嵩により、経常収支比率は高い水準になると見込んでいます。
そのような中でも、令和6年度は、8年間に渡る第2次宇城市総合計画の最終年にあたり、宇城市の将来像「ちょうどいい!住みやすさを実感できる都市・宇城」の実現に向けての総仕上げの年にあたります。
後期計画に掲げる5つのまちづくりの基本目標に基づき、市民ニーズや時代の潮流を的確に把握し、スピード感を持ち、国営緊急農地再編整備事業や市道大野川リバーサイドロード線整備事業、松橋駅西・小川駅西の開発事業などの重点政策をはじめとした事業に取り組んでまいります。
また、これまで同様に、小中学校の改築事業や給食費の無料化、子ども医療費などの子育て分野には特に傾注し、加えて定住促進に向けた補助金の新設、子育て世代をターゲットにした豊野公園整備構想にも着手し、人口減少に対応した施策も積極的に展開いたします。
目指すのは、「住んで良かった」「住みたい」と思えるまちです。この実現に向け、本年度も精一杯、皆様と共に取り組みを進めて参ります。
4.令和6年度重点施策
(1)育てるまちづくり
- 高校3年生まで拡充した子ども医療の助成費
- 保育所等の施設整備事業費
- 保育所等の副食費無償化事業費
- 松橋中学校建て替え事業費
- 豊福小学校建て替え事業費
(2)住み続けるまちづくり
全ての市民に「ちょうどいい!住みやすさ」を実感して頂くため、医療・福祉、健康、環境については引き続き充実を図り、将来にわたり安全で安心して住み続けられる環境の整備を図って参ります。
具体的には、
- さしより野菜推進事業費
- 定期予防接種業務委託費
- 保健福祉センター中規模改修工事測量設計費
などを計上しております。
また、本年4月からは、新クリーンセンターが本格稼働します。新たな施設は、可燃ごみの処理に伴う熱エネルギーを利用して発電を行い、施設内での利用や余剰電力は売電されるエネルギー回収型廃棄物処理施設です。電源の確保と環境にも配慮した次世代型の施設で地域循環型社会の形成を期待するところです。
(3)持続するまちづくり
人口減少に対応するため、空き家・空き地の増加への対応はもとより、大規模化・激甚化する自然災害に備えた強靱性の確保、脱炭素社会の構築に向けた環境負荷の低減、並びに先端的なデジタル技術の導入による社会課題の解決など、様々な観点からの持続可能なまちづくりが求められています。こうした中、昨年3月に定めた都市計画マスタープラン及び立地適正化計画に基づき、さらなる土地利用と必要な機能の誘導を図り、道路などのインフラ環境も整備いたします。
基幹産業である農業については、意欲ある農業者が農業を継続できる環境を整え、次世代を担う農業者の経済的支援や後継者の育成を図って参ります。
また、引き続き行財政改革を進めるとともに、業務改革、意識改革に取り組み、人手不足が深刻化する中でもデジタルの力などを活かし行政サービスを向上させる環境の構築を図ります。
具体的には、
- 国営緊急農地再編整備事業費
- 市道大野川リバーサイドロード線整備事業費
- 小川駅周辺整備基本計画策定業務委託料
- 業務効率化支援業務委託料
などを計上しております。
(4)選ばれるまちづくり
宇城市は、令7年1月で市政20周年を迎えます。これまでの20年の歩みへの感謝を申し上げ、これからの 20年に向けた発信として市政20周年記念事業に取り組みます。
これからの20年に向け、転出者より転入者が多くなる社会増の流れを継続できるよう、市の強みである不知火美術館・図書館との更なる連携や、移住者への補助金をはじめとした子育て世帯に向けた優遇策の周知、空き家バンクの積極的な PRなどに取り組み、宇城市の魅力を発信していきます。
また、TSMCの進出による経済効果を最大限享受出来るよう、関連企業の誘致はもちろんのこと、地場企業の育成にも取り組んで参ります。
具体的には、
- 市政20周年記念事業費
- シティプロモーション事業費
- 子育て世帯定住促進事業補助金
- 企業誘致関係補助金
- 豊野総合公園整備基本計画策定業務委託料
などを計上しております。
(5)活躍するまちづくり
地域課題や市民ニーズがますます多様化する中、安全・安心で、活力ある地域社会を実現していくためには、行政だけでなく、市民、自治会や様々な市民活動団体、教育機関、企業など、多様な担い手がそれぞれの長所を発揮し合い、補い合う“協働”が不可欠です。
市民一人ひとりが主体となったまちづくりを推進するとともに、男女共同参画社会の実現やスポーツによる地域の活性化、市民の皆様が生涯にわたり学ぶ機会創出のため、文化施設、スポーツ施設を整えて参ります。
また、本年は市の偉人である竹崎季長公が蒙古襲来の際に活躍した文永の役から750年の節目の年でもあります。この節目の年に改めて活躍を掘り起こし、磨き上げるため、長崎県松浦市など24自治体と構成する元寇所縁(ゆかり)のネットワークに加入し、絵詞(えことば)のレプリカ作成や不知火美術館での企画展などを計画して参ります。
具体的には、
- 図書館・美術館指定管理業務、企画展開催費
- 小川総合文化センター中規模改修工事
- 豊野トレーニングセンター中規模改修工事
- 龍驤館耐震補強工事
- 元寇・所縁(ゆかり)のネットワーク事業
などを計上しております。
おわりに
令和6年度の主な事業について申し上げましたが、このほかにも、第2次総合計画に掲げる施策に基づく各種事務事業を堅実に実施し、将来都市像の実現に向け、着実なものとしてまいります。
本市は、平成17年1月15日に合併してから、20年を迎えようとしています。今後も、先人の築いてきた歴史と伝統を受け継ぎながら、新たな時代に向かって、万全を期してまいります。
そして、あらゆる世代の市民の皆様が、「住んでいてよかった」、「これからもずっと住み続けたい」と実感できるまちづくりに、引き続き、市民目線をもって、市職員と共に一丸となり邁進して参ります。改めて、市民の皆様並びに市議会議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げます
以上、令和6年度の重点施策と予算の概要を申し上げました。市議会におかれましては、よろしくご審議をいただきますようお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。
令和6年2月7日
宇城市長 守田 憲史