2025年02月03日更新
1月20日、松橋西防災拠点センターで「空き家啓発ワークショップ」を開催しました。今回のワークショップは、現在、宇城市地域振興課と熊本県立大学佐藤研究室とが一緒に進めている「空き家所有者への効果的な意識改革に関する研究」の一環として開催しました。今回は、研究の一環ということもあり、松橋町8区にお住まいの7名に協力いただき実現しました。
最初に、熊本県立大学環境共生学部の佐藤哲(さとうさとし)准教授、4年生の杉本陽菜(すぎもとひな)さん、高畑莉央(たかはたりお)さんの自己紹介とワークショップの内容について説明がありました。
ワークショップ冒頭の自己紹介の様子。写真奥、右から佐藤准教授、杉本さん、高畑さん。
まず、佐藤准教授から研究の詳しい内容と「いえの手帳」についての説明がありました。「いえの手帳」とは、家のエンディングノートのようなもので、家の所有者が将来自分が住まなくなった後、家をどのようにしたいかを考え、家の情報と一緒に所有者の意思を記入する手帳です。空き家になる前に、家の今後のことを家族と話し合い共有でき、空き家になったときにすぐに対応できます。今回のワークショップでは、研究の成果として完成した「いえの手帳(簡易版)」を用いて、不動産登記や相続の手続き、空き家を放置しておくとどうなるか等に加え、記入の仕方や考え方についての説明もありました。
写真左、佐藤准教授の説明の様子。
次に、高畑さんから「成約に繋がりやすい空き家」についての説明がありました。まず、空き家バンクにおいて、どのような状態の空き家が成約に繋がりやすいかを、今まで成約した空き家の情報や「空き家・空き地バンク360」ホームページのアクセス回数、掲載期間等のデータを解析し見つけ出しました。その解析データをもとに、空き家の状態を点数化することにより、点数が高い空き家は成約に繋がりにくく、点数が低い空き家は早期成約が見込めるというように、空き家バンクに登録する際に「成約に繋がりやすい空き家」かを予測できるようになりました。
まとめとして、成約率を上げるために空き家所有者ができることは、「残置物を残さない(特に仏壇は空き家バンク登録前に撤去すべき)」、「大規模改修が必要になると売れる可能性は大幅に減少する(日頃からの手入れで防げる)」、「物件の適正価格を不動産事業者等から知る」という説明がありました。
写真左、高畑さんの説明の様子。
最後は、杉本さんから「空き家を成約に繋げるための改修」についての説明がありました。空き家バンクに登録されている空き家の中には、長い間成約に繋がっていない空き家があります。そのような空き家を成約に繋げるにはどのような改修をしたらよいかを検証するため、成約の決め手になったこと、どのような改修を行ったかについて、成約者にアンケートやヒアリング調査を行いました。調査結果のまとめとして、「売買物件よりも賃貸物件の方がきれいな状態を求められる」、「特に高齢者の方は賃貸物件よりも売買物件を希望する方が多い」、「空き家を購入する理由としてペットを飼いたいとの声が多く、売買での成約が多い理由と関係しているのではないか」との説明がありました。
写真左、杉本さんの説明の様子。
また、杉本さんは実際にある空き家の間取りをもとに、改修模型を製作しました。成約者へのアンケートやヒアリング調査を参考に、改修箇所のパーツが作ってあり、畳をフローリングに変えたり、脱衣所を設置できるようになっています。参加者からは、「わかりやすい」、「イメージしやすい」、「売れない理由がよくわかる」、「改修の参考になる」等の声が上がっていました。
改修模型を説明している様子。
参加者の皆さんには、今回のワークショップで、いえの手帳(簡易版)の活用、空き家バンクでの成約の可能性予測、成約に繋がりやすい改修について学んでいただき、「勉強になった」、「家のことを考えるきっかけになった」、「空き家バンクを知った」等の感想をいただきました。
近年、空き家問題は深刻化しており、空き家が放置されることで、周辺環境に悪影響を及ぼしています。少しでも空き家になる期間を短くすることで、空き家の老朽化を防ぐことができます。また、空き家の所有者やこれから所有者になる可能性がある人に対し、きちんと管理しなければならないという意識を持ってもらうためには、地域の「声」が重要です。
今後も、地域の皆さんが空き家問題や家のことに関心を持つ「きっかけ」として、空き家イベントやワークショップの開催を計画しています。
最後に、家のことを考えるツールとして、佐藤研究室が新たに製作しました「いえの手帳(簡易版)」も是非ご活用ください。
※両面印刷後、三つ折りにしてご使用ください。
いえの手帳(簡易版)を持つ写真左から、杉本さん、佐藤准教授、高畑さん。