2024年03月21日更新
山の中の海軍
ビワの実が熟したような鮮やかなオレンジ色の機体。ホールに展示されている飛行機は、九三式中間練習機。通称「赤とんぼ」と言われ、戦時中に使われた実物大模型だそうです。
ここは、ぐるりと深緑の山々に囲まれた人吉盆地の南端に位置する錦町の「ひみつ基地ミュージアム」。戦時中に建設された海軍の航空基地跡にあります。
戦争当時6000人に及ぶ飛行予科練生がここで学び、末期になると、神風(かみかぜ)特攻隊の疎開訓練場所にもなりました。滑走路下には総延長7キロを超える地下壕(ごう)が掘られています。
建物を出て、竹林の揺れる階段を下って行った先に、地下壕はありました。魚雷の組み立てを行っていたという内部は天井が高く、爆撃の衝撃に備え、コンクリートで固められています。ひんやりと暗い壕の中から、明るい出口の向こうに集落が見えました。こいのぼりが舞っています。
1945年4月アメリカ軍は沖縄上陸作戦に先駆け、3月18日、19日の両日に九州をはじめ西日本各地の軍事基地を攻撃しました。日向灘に停泊していた空母から出撃した戦闘機14機が午前11時15分に人吉に到達。15分間に一万発を打ち込んだ空襲により、地上の施設は大破。林を挟んで、滑走路の延長にあった民家も被弾し、27人の死傷。その中には10歳と14歳の子どもも含まれていました。
ロシアによるウクライナ侵攻から1年半。今、日本は“有事”に備え、敵基地攻撃能力の保有、殺傷能力兵器の輸出解禁と軍備の拡大を続けています。
大戦の反省から、幾重にもかけられたカギが一つずつ外されていく…。戦争体験者が年々いなくなる中、「ひみつ基地ミュージアム」は当時を生きた人々の姿や社会、そして文化の展示を通して、その教訓を受け継ぐ、大切な場所のひとつでした。
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