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第55、56回 ミナマタに育った教師の話 前編・後編 2023年4、5月号

2024年03月19日更新

ミナマタに育った教師の話  前編  2023年4月号

小・中・高校生を対象とした宇城市のふれ愛学習会は、1年おきに水俣市に出かけています。子どもたちは公害を引き起こした、チッソ工場(チッソ株式会社。以下チッソ)の排水口跡や患者が多発した集落を歩き、水俣病差別を通して人権を学びます。

現地講師として子どもたちを案内してくれるのは梅田卓治(たくじ)さん。水俣市の小学校に勤める教師で、長年患者さんたちと共に差別の解消に取り組んできました。加害企業であるチッソに勤めていたお父さんのことや子ども時代に起こした自分の差別事件。現地学習に参加する中学生の事前学習に宇城市に来て、「自分と水俣病差別」について話してくれました。

「原因の水銀を垂れ流したチッソの責任は明らかで、そこで働いていた父に責任がないとは言わないけれど、色んな立場の人たちがいたことを知っていてほしい」。チッソに勤めながら定時制高校に通っていたお父さんの育った環境、そこで働く人たちの印象深い記憶が語られます。

「水俣では患者交流を学校で行っていて、その子どもの感想から思うことがあります。『前向きに生きていてすごい、自分も前向きになりたい』という内容です。気持ちは大切ですが、そこに『なぜ前向きになったのか、自分も前向きに生きるためにはどうしたらいいのか』という先が書かれていない。

そんな時はもっと深く患者さんの声や思いを伝えるようにしています。患者さんが前向きになれたのは、『水俣病になったのは自分が悪いわけではない』『水俣病になったのは恥ずかしいことではない』『水俣病について学んだことで、自分と向き合い受け入れることができた』など、理由があります。

苦しいことを共有したり相談できる仲間ができたから、向き合えるような学習と本音を語れる家族や仲間がいたから。そういった患者さんの体験を通して心の持ち方や価値観を学ぶことが患者から学ぶ、深く学ぶということです。」

(後編に続く)

ミナマタに育った教師の話  後編  2023年5月号

案内してくれる梅田卓治さん自身が中学時代に起こしたという事件を中学生に語ります。

「小学校には患者さんが身内にいる生徒も通っていましたが、水俣病の授業をしっかり受けた記憶はありません。中学3年の陸上競技大会の時です。400メートル走で、最後尾の生徒がふらふらになってゴールを目指していました。その生徒に向かって僕たちの応援席から、『水俣病が走っとる』という声が上がったんです。それを聞いて、僕はたしなめるどころか一緒になって笑いました。翌日その生徒の中学校から電話が入りました。泣きながら指導される先生の姿に本当に情けないと思いました。こうやって皆さんに話をするようになった根底にこの事件の経験があります。

僕の価値観や考え方は水俣で生まれ育ったからこそ出来ているものです。他の地域より優れているとかではなく、僕という人間をつくってくれたオンリーワン、唯一の場所という感謝が誇りです。そういう気持ちを水俣で育つ子どもたちに持たせることが大事だと思っています」

宇城地区でも中学生が水俣の生徒に差別発言をした事件がありました。2010年サッカー大会でのことです。それに触れ、最後に梅田さんは患者さんたちの思いを伝えます。

「患者さんは差別発言をした子どもに会いたがった。それは発言したその子が悪いのではなく、人権や差別に関する教育をしていない大人の責任と伝えたかったから。差別発言をした側が大変なことをしたと右往左往せず、どこが足りなかったのかと考えるきっかけにしてほしかった。反省はしても、差別発言をした責任を背負い込む必要はなかったと言っていました。」

2月、市役所ロビーに宇城市の5年生の「水俣に学ぶ肥後っ子教室」参加作品が展示されていました。子どもたちは学んできたことを丁寧にまとめていましたね。学習を通して、知識で終わるのでなく、「自分に向き合う」。梅田さんの語る、そんな深い学びが全ての学校で目指せるといいですね。

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