2022年03月02日更新
1) 地域特性を生かした農林水産業の展開
1 多彩な農業の推進
新市では、半島地域、平坦地域及び中山間地域といった変化に富んだ自然条件や立地条件を生かし、野菜、花木などの施設園芸をはじめ、果樹、米、畜産など多彩な農業生産活動が展開されています。
しかし、農業従事者の高齢化や担い手の不足、旧開拓地や樹園地での生産基盤整備の遅れ、耕地利用率の低下及び中山間地域を中心とした耕作放棄地の増加が深刻化しており、農業生産についても、度重なる気象災害や輸入農産物の影響による価格の低迷などから農業産出額が減少傾向にあることなど多くの課題を抱えています。
このような現状を踏まえて、新市の農業振興のためには、認定農業者を中心とした経営感覚に優れた地域農業の担い手の確保・育成、輸入農産物などに対応するための一層の高品質・低コスト生産及び生産者と消費者との連携・交流を進めるとともに、それぞれの地域の特性を生かした農業や環境に配慮した農業の推進、さらには新市の統一ブランドの確立などを図る必要があります。
(1)担い手の確保と育成
- 農業経営者の育成
農業経営者の育成に当たっては、認定農業者制度を活用しながら他産業並みの所得が得られるような経営の確立を支援します。また、認定農業者組織のネットワークを強化し、農業経営者相互の情報交換や交流を活発化することにより、個々の農業経営の改善や地域農業の活性化を推進します。
- 新規就農者の確保・育成
新たな担い手を確保するため、学校教育と連携し、小中学校の段階から農業にふれあい、農業を理解する学習への取組みを推進します。
- 女性の経営参画と社会参画の促進
女性農業者が生産現場や地域社会において意欲をもっていきいきと活動し、その能力が発揮できるような環境の整備を推進します。また、女性農業者のネットワークづくりや女性の視点を生かした直売所運営や農産物加工、学校給食との連携などへの取組みを支援します。
- 高齢農業者の能力活用
軽量野菜などの高齢農業者に適した作物導入の支援を行うとともに、豊富な経験で培われた技術や知識を生かした農産物加工、直売所運営など起業活動を支援します。
- 効率的な営農システムの確立
地域農業の担い手の減少や高齢化が進行していることから、農協の農地保有合理化法人などによる農地の流動化や農作業の受委託を促進し、認定農業者を中心とした担い手への農地集積や作付けの集団化による農地の有効利用を図ります。
(2)安心・安全な農産物づくりの推進
- 生産者と消費者との連携・交流
ア) 地元産農産物の地元消費者への供給促進(地産地消の推進)
地域内で生産された新鮮な農産物を購入したいという住民の志向が高まってきていることから、三角フィッシャマンズワーフ、不知火温泉センター、アグリパーク豊野等の物産館のネットワーク化による販路拡大、小中学校との連携による地元産農産物の学校給食への供給を図るためのシステムづくりなど、県内・地域内への新鮮で高品質な農産物の供給を促進します。
イ) 都市と農村の交流
インターネットなどを積極的に活用しながら、都市住民への情報発信、採りたての新鮮な地元産農産物などの地域資源を生かしたイベントの開催など、都市住民との交流促進に向けた取組みを推進します。
また、熊本都市圏内との交通アクセスに恵まれていることから、果実や花きなど多彩な農産物を活用した観光農園や市民農園への取組みを推進します。
ウ) 農業・農村への理解促進
農作業体験などの各種イベントを通して、消費者が農業とふれあう機会を多く創出することにより、農業・農村の魅力や多面的機能についての理解を促進します。
また、学校関係者との連携を強化し、学童農園、農業体験学習などを通して、小中学生、地域住民などの農業や食文化への理解促進を図ります。
- 環境に配慮した農業の推進
土づくりを基本に、減農薬・減化学肥料栽培などの環境にやさしい生産方式を普及し、安全・安心な農産物づくりを推進します。
- 効率的な流通システムの確立と販路拡大
生産者と卸売市場、物産館や直売所、学校給食、地元の食品産業などとの連携を強化し、新鮮で、安全・安心な農産物の供給を促進します。
(3)地域の特性に応じた農産物・農業生産基盤の整備(ゾーン毎の整備方針)
「集約型農学ゾーン」「新都市創成ゾーン」
平坦水田地域は、水稲、いぐさ、大豆、たばこ、施設園芸などを組み合わせた複合経営が展開されていることから、担い手への農地利用集積を進めるほ場整備、施設園芸作物の高品質化や作物転換を図るための排水改良などの基盤整備を推進します。また、農産物の高品質化を図るため、排水機場など土地改良施設の適切な維持管理や安定した農業用水の確保など、営農に配慮した生産基盤の整備を推進します。
なかでも、整備が遅れている旧干拓地については、用水確保及び大区画による圃場の整備といった総合的な整備を推進し、コスト低減が図られるよう努めます。また、農業用水確保については、各種の取水事業や有効活用事業の促進を図ります。
土地利用型作物については、農地の利用集積などによる一層の生産コスト低減や高品質化を図り、メロン、シクラメン等の花きなどについては、新品種の導入や品質向上によりブランドの確立と生産安定を図ります。また、施設野菜については、いちごの高設栽培の導入や栽培管理のシステム化等を図ります。
「観光・貿易ゾーン」「オレンジと歴史・保養ゾーン」
畑作地帯においては、畑作経営の安定、新規作目の導入による高付加価値・高収益型農業の展開及び農作業の省力化を図るため、かんがい施設、農道、区画整理などの総合的な基盤整備を推進します。
特に、樹園地については、大部分が傾斜地で分散していることから、省力化や高品質化により経営安定を図るため、立地条件に応じた区画整理並びに作業道及びかんがい施設の整備を推進します。
デコポンを中心とする果樹については、農道網や樹園地の整備などによる省力化を推進するとともに、優良品種への転換、栽培管理の徹底などにより高品質果実の安定生産を推進します。ラン等の花きについては、オリジナル性を発揮し、産地の活性化を図ります。
「彩りあふれる自然空間ゾーン」
中山間地域においては、地域の特性を生かした高付加価値型農業の展開を図るため、営農形態や作物など地域の実情に応じた生産基盤の整備とともに農村環境の総合的な整備を推進します。
また、農作業受託組織の育成など、地域における生産体制を再構築しながら、省力・低コスト生産を推進するとともに、太秋(柿)等の面積拡大など地域の特性を生かした新たな産地や特産品づくりなどを推進します。また、アグリパーク豊野をはじめとする物産館や農産物直売所間の連携などにより、都市との交流を一層活発化し、農業者の所得向上に努めます。
2 森林の健全性の確保と林業の振興
林業経営意欲の減退、担い手の減少・高齢化などから、間伐の遅れなど適正な管理が行われない森林の増加が危惧されている一方、国土の保全や水源のかん養といった森林の多様な機能に対する市民の関心が高まっています。
森林の持つ多様な機能を持続的に発揮させるため、森林の健全性を確保するとともに、林業生産活動を持続的に行い、森林資源の循環利用を進めます。
(1)林業基盤整備の推進
- 林道、作業道の整備
林業生産性の向上や森林の適正管理等のため、林道・作業道の新規開設や改良・舗装などによる機能向上など、効率的な整備を進めます。
- 林道、作業道の整備
素材生産などの作業コストの削減、作業上の安全の確保を図るために、林業施業の機械化を促進します。
(2)多様な機能の発揮に向けた森林の整備
- 多様な機能の発揮に配慮した森林施業の推進
森林の循環利用を確保するとともに、国土保全、水源かん養など森林の多様な機能の発揮をめざし、伐採年齢の長期化、複層林や広葉樹林への誘導など多様な森林づくりを進めることに加え、間伐などの人工林の適切な整備を推進します。
(3)林業振興に向けた環境の整備と経営体の育成・確保
- 公共施設・公共事業などにおける 県産材利用の推進
地元産材利用の率先行動をするため、公共施設や公共事業などにおける地元材利用を推進し、木材の良さをアピールします。
- 林業担い手の育成・確保支援
林業従事者の減少・高齢化に対応し、地域ぐるみの体制づくりを整備するため、森林施業の共同化や林業従事者の育成・確保、森林組合の機能強化を図ります。
- 特用林産物の振興
しいたけ(生・乾)、たけのこ、竹材、木炭など の特用林産物などへの取組みを促進します。
3 海洋環境の保全とつくり育てる水産業の振興
水産業を取り巻く環境は、漁場の制約や資源の減少などによる漁獲量の減少、輸入水産物の増加などによる魚価の低迷、さらには漁業就業者の高齢化や漁業後継者の減少など 厳しい状況にあります。
魅力ある水産業の振興を図るため、漁港の整備をはじめ、藻場・干潟など漁場環境の改善、さらには消費者ニーズに対応した安全で安心な水産物を供給できる体制の整備などに取り組みます。
(1)漁場の整備と水産資源の持続的利用
- 漁場環境改善対策の推進
藻場・干潟は、重要な漁場であるばかりでなく、産卵、幼稚魚の生育など水産生物の増殖の場としての機能や、そこに生息する多様な生物による有機物の分解、窒素・リンなど栄養塩の取り込みによる海洋環境の浄化機能を有しています。こうした、藻場・干潟をはじめとした良好な漁場環境の確保や復元のため、他の市町村や漁協と連携し、海洋環境の調査や沿岸地域一体となった清掃活動などを推進します。
(2)つくり育てる漁業の推進
- 水産資源の維持増大と観光漁業の推進
水産資源の維持増大を図るため、アサリ稚貝の蒔付け、クルマエビ、ガザミ等の稚魚の放流を推進し、栽培・養殖漁業の推進を図るとともに、放流後の育成管理や漁場造成を推進します。また、観光漁業の推進を図ります。
(3)生産基盤、流通対策の強化
- 漁港と漁業施設の整備
防波堤や浮き桟橋など水域施設や係留施設、人工魚礁などを整備します。また、漁業協同組合などが行う養殖施設、水産加工施設などの整備を支援します。
- 流通機能の強化
不知火温泉センター、三角フィッシャマンズワーフ等の水産加工品の販売拠点の機能強化を進めながら、消費の拡大と収入の向上・安定を図ります。
- 漁協組織の整備と漁業の担い手の確保・育成
後継者の育成や漁協組織の強化を図り、併せて水産加工品開発を推進するための組織結成を図ります。
2) 地域に根ざした商工業の育成
地域商業を取り巻く環境は、極めて厳しい状況にあります。特に、中心商店街においては、空き店舗の増加による商業機能などの空洞化が進展しており、「まちの顔」としての商店街の賑わいを失いつつあります。一方、高齢者が利用するという視点からの商店街の活性化は、高い実現可能性があるものと思われます。
このため、こうした環境変化を的確に捉え、商工会、商店街、TMO(街づくり機関)などと協力し、創意工夫を生かした中心市街地や商店街の活性化に向けた取組みを推進します。
また、経済のけん引役としての製造業の役割はますます重要となってきています。企業誘致は、地域への経済・雇用への波及効果が高いことから、環境負荷が少ない企業などの誘致を推進します。さらに、企業間の連携等による地場産業の振興に努めます。
1 魅力ある商店街づくりと中心市街地の活性化
(1)商店街の賑わいの再生
商店街を様々な機能が集積する地域コミュニティーの核として再生するため、中心市街地活性化基本計画の策定とそれに基づく市街地の整備改善を推進するとともに、TMOによる構想や計画の策定とそれに基づく中心市街地活性化のための取組みを推進します。
さらに、商店街再生のモデルとなる意欲的な取組みを推進するとともに、少子・高齢化をはじめとする急速な社会環境の変化に対応したビジネス展開を支援します。また、既に生じた空き店舗を活用した新たな事業に取り組む個人や企業を支援します。
(2)商店街基盤整備の促進
商店街が行う住民の利便性と集客力を高める駐車場やイベント広場、統一サイン、高齢者や子どもにやさしい歩道やポケットパークなどの施設整備を推進します。
(3)商工会を中心とした指導体制の確立
商店街が消費者ニーズに対応し活性化を図るためには、商工会の役割は重要です。経営の近代化・合理化等経営者の経営能力と経営意識の向上、後継者の育成等について、商工会と協力しながら各種事業を推進していきます。
2 企業誘致の推進と地場産業の振興
(1)企業誘致の推進
就業機会の拡大、誘致企業と地域企業との生産連携や技術移転の促進のため、税制優遇制度等による優遇制度を効果的に活用し、地域への経済的波及効果が期待され、環境負荷の少ない産業分野や研究開発機能を有する企業などの誘致を推進します。
(2)市場ニーズを考慮した工業団地計画の推進
誘致する企業の誘導地域として、市場ニーズを的確に把握し、新たな工場適地の選定や必要に応じた既存団地の拡張などを進めます。
(3)地場産業の振興
地域が有する豊かな資源を活用した産業が、生活者のニーズに対応した商品を供給できるような支援体制を整えるとともに、地場産業振興のための販路拡大などに向けた取組みを支援します。
また、異業種交流、製造業と農業などの産業間連携、地域の枠を超えた連携を促進し、新商品の開発や市場拡大などを図ります。
3) 地域観光の基盤強化
新市は、すぐれた自然、歴史・文化、農林水産品など、多様な観光・物産資源に恵まれていますが、その産業への活用は十分とは言えません。観光は、多くの雇用を生み出す分野であることから、産業として位置づけ、施策の推進を図る必要があります。
観光客の旅行動向や形態は、団体型から個人・小グループ型へ、あるいは見学型から体験・学習型へと変化しています。観光客が気持ちよく訪れ、旅することができるよう、観光施設の整備などを推進するとともに、新たな観光ルートの提案やイベント、キャンペーン等を実施していきます。
また、物産振興については、個々には優れたものがあるにもかかわらず、商品としてのブランドが確立していないものもあることから、地域産品を観光資源として活用する仕組みづくりなどに取り組み、多様化、個性化する市場を志向した商品開発やインターネットによる商品紹介や販売など産地形成に向けた一体的な取組みを支援していきます。
1 戦略的な観光推進
(1)受け入れ態勢の整備
新市観光推進協議会の設立を図るとともに、各種団体などの協力も得ながら、 多様な主体が連携して地域の資源を生かし推進するための体制を整備し、多様な観光ルートの提案により、広域観光の推進に努めます。
また、観光施設・町並み景観整備や観光地へのアクセスを円滑化する道路、観光標識などの整備を推進するとともに、各地域で行われている祭り等各種イベントの開催などのソフト事業を推進します。
(2)戦略的な観光客の誘致
旅行者のニーズを的確に把握し、輸送機関や旅行代理店などと連携して実効性のある戦略的キャンペーンを展開します。また、港や白壁土蔵をはじめとする歴史、文化などの観光資源を活用したストーリー性のある新たな観光ルートを提案するとともに、干潟に関する環境学習などの体験学習を取り入れた修学旅行の誘致に 取組みます。さらに、インターネットを活用して、観光地やイベント、観光施設などの情報発信を積極的に推進するとともに、観光客の意見を観光地づくりに生かしていきます。
2 市場を志向した物産振興
(1)地元産品の販路拡大
産品の販路拡大を図るため、物産館など特産品販売施設の整備・拡充を推進するとともに、生産・加工業者との連携強化を図ります。また、市民や観光客を対象とした情報発信機能の充実や、通販方式、インターネットでの産品の紹介・販売などに取り組みます。
(2)他産業との連携による特産品開発
地域の産品や産業を観光資源として活用するため、地域産業を観光の視点で見直し、農林水産業などと観光産業とが連携した体制の構築や、地域の産品を観光客に提供する新たな仕組みづくりに取り組み、新たな特産品開発に努めます。