2023年07月05日更新
八代海北部の海上には、毎年旧暦8月1日(八朔)の未明、不知火と呼ばれる不思議な火が現れます。不知火は、漁火や対岸の街明かりなどの光源が、日中暖められた空気と夜間の放射冷却による複雑な空気層により、異常屈折して起こる蜃気楼現象の一種とされています。
『日本書紀』には、景行天皇の九州巡幸の際に、「芦北から船出して八代海を航行中に夜になり方角が分からなくなった、遠方に見えた火を目指して進むと無事に着岸できた、そこにいた人に誰が火を灯してくれたのかと尋ねたところ、誰もその火のことを知らなかった」という記述があります。このことが由来になり、「(誰も)知らぬ火」=「不知火」と呼ばれるようになりました。
不知火町永尾にある永尾剱神社は、不知火現象の観望に最も適している立地にあり、旧暦の八朔の夜には多くの人々が訪れます。その様子は、江戸時代の書籍にも記されています。
また、八代市の八代海沿岸部に位置する水島も、『日本書紀』に記された景行天皇由来の地で、九州巡幸の休憩の際に、小左(おひだり)という人物が島から湧き出た水を景行天皇に献上したとされています。
永尾剱神社、八代海上の不知火現象発生海域、水島の3ヶ所は、『日本書紀』に見られる景行天皇由来の地として、国の名勝に指定されています。
永尾剱神社
水島(八代市)