2022年03月27日更新
第6回 ハンセン病回復者であることを隠さなくてもいい社会へ 2019年(平成31年)3月号
「ボンちゃんは82歳、元気だよ!」という本を読みました。作者のボンちゃんこと石山春平(はるへい)さんはハンセン病回復者です。小学6年生で「もう学校に来るな」と机を焼かれ、5年間自宅の納屋に隠れて生活した後、療養所に隔離されました。重い後遺症がありながらも、この本ではその苦難をユーモアを織り交ぜて語られています。
らい予防法廃止から2年後、熊本地裁で起こった国家賠償訴訟が全国に広がり、春平さんも提訴者となる決断をします。そして、2001年勝訴。今年私は、最初の提訴者13人のうち4人が入所されている菊池恵楓園(けいふうえん)を訪ねました。
園内には、国道に沿った真っすぐな道があります。ここには以前、高い石塀と門がありました。入所者の方が「面会に来た母親が、見送る自分を何度も振り返った」と話されていたのを思い出します。その近くにある平の真新しい建物。靴箱には赤青ピンク…色とりどりのかわいい靴が並んでいます。ここは、長い間地域から隔絶されていた療養所に子どもたちの声が響き渡り、家族が自由に出入りできるようにとの願いを込めて全国で初めてできた保育所です。
春平さんは語ります。「社会復帰していても、普通に生活できている人はそういない。配偶者や子どもにも自分の過去が言えず、会社にも隠している…。偏見や差別の芽は、私たちの心の内にあるけれど、それでも人を信じたい。冷たい視線よりも、もっとたくさんの優しさに救われてきた人生だから」。ここを母園として育つ子どもたちを見ながら、春平さんの思いに、私も応えられるようになりたいと思いました。
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