2022年03月27日更新
第10回 震災と人権 2019年(令和元年)7月号
「南阿蘇・黒川ウォーク」に参加しました。4月後半の南阿蘇は、抜けるような青空と新緑に包まれていましたが、扇状に長く露出した山肌が激震の傷跡を残していました。子ども連れの家族も見られ、広い世代が集まりました。地元ボランティアの案内で出発です。
ここ黒川地区には地震前、東海大学農学部の800人が生活していた「学生村」がありました。56棟あった学生アパートは18棟を残し、今はさら地となっています。語り部をしてくれたのは東海大学の学生の皆さん。当時の大学生活の様子や地震発生時の説明中、「どうしてこの活動を?」と尋ねると、「活動は自分たちのためにと思ってしています。私たちが語り継いでいくことで、ここにもう一度帰って来られるようにと願っています」と答えてくれました。農学部の実習棟が今年3月に完成し、ここでの授業も一部再開されています。
歩いた後は、おいしいのっぺ汁と阿蘇高菜のおにぎりを頂きました。作ってくれた女性が「週1回実習棟にお弁当を届けています。以前のように子どもたちと話したいと思い、始めました」と話しました。地震で学生が亡くなったアパートの元大家さんでした。
大学正門に続く道路に、阿蘇大橋が崩落した現場があります。重機が整地する山腹はかつて国道57号と豊肥線の線路があった場所です。地域コミュニティーが豊かで学生と強い絆で結ばれていた黒川地区。その復興への願いを受け、阿蘇大橋、JR豊肥線も2020年の開通に向けて再建が進められています。
尊い命が犠牲となり、暮らしや働く場が根こそぎ奪われる大規模災害では、人のつながりも薄れてしまいがちです。このような震災の経験を風化させない人と人との絆を大切にする営みが、人権を守ることにもつながるのではないかと感じました。
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