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第21回 教室に入りたい気分(前編) 2020年(令和2年)6月号

2022年03月27日更新

第21回 教室に入りたい気分(前編) 2020年(令和2年)6月号

 わたしが出会った一人の少女のお話です。
 小学2年生の後半から、こゆきさん(仮名)は教室に入れなくなりました。彼女の担任に決まった春休み、私は担当医に会いに行きました。医師は設問に答えた彼女から繰り返し出てくる給食へのマイナスイメージに触れました。「時間内に食べきれずにみんながごちそうさまをした後、残されて食べることは彼女には辛かったのかもしれない。先生はどういうやり方をしますか」と尋ねられました。私が「時間がきたら、給食が残っていてもそこで終わりです」と答えると、「それはいいですね」と笑みを返されました。

 4月、始業式後の担任発表を聞いて、こゆきさんは日記に「わたしはやったぁと思いました。はじめての男の先生だから、ちょっときんちょうしています」と書いてくれました。久しぶりの登校から3日間、午前中を保健室で過ごしました。彼女なりに新たな学年で自分を奮い立たせていたのでしょう。その後欠席が続き、私は授業のプリントを持って家庭訪問を続けました。玄関を開けるとその日使う予定だったリコーダーが赤いランドセルからのぞいています。今朝も行く準備をしていたのです。学習を済ませ、私が帰るときはお母さんと玄関を出て見送ってくれるこゆきさんでしたが、続けての訪問はストレスになるかもしれないと思い、1日空けるようにしました。


 5月に入り、彼女は週2日という目標を立て、保健室登校を再開しました。給食はかなり少なめに用意しましたが、まったく手を付けようとはしませんでした。そのうち一緒に食べたいという子どもたちが出てきたので、本人の了解を得て保健室で給食時間を過ごすようになりました。表情から緊張が取れ始めた頃、「もう給食を見てもお腹痛くなかろ」と話しかけると、こゆきさんは笑顔でうなずきました。保健室を出て図書室にも友だちと行くようになりました。けれど、教室棟には決して足を踏み入れようとはしませんでした。

 後編第22回 教室に入りたい気分(後編) 2020年(令和2年)7月号へ続く

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